STUDIOwawon

STUDIOwawon(スタジオわをん)は、「かる、ゆる、らく」をモットーに、ことばをデザインしてゆくスタジオです。

見えないものを文学する

 いろいろを本をあさっているうちに、佐々木茂美著『「見えないもの」を科学する』という本に出会った。1998年の4月に発行となっている。もう立派な古本だ。
 そこには、未だ科学的に認められていない、或いは認めにくい「気」についてあれこれ書かれていた。フリーエネルギー(宇宙エネルギー)の説明があったり、地球は巨大な磁石であると書かれていたり、ぼくにとっては興味のある話ばかりでどんどんと読んでいった。
 その中に原子や原子核についての記述もあった。
 物質がその固有の性質を持っているのは分子までで、その分子をさらに細かくしたのが原子になる。
 さらにその原子の構造を見てみると、陽子と中性子からなる原子核があって、その周りを電子が回っている。電子は公転しながら自転もしている。地球みたいなものだ。
 原子の構造を電気的に見ると、陽子はプラス、電子はマイナスであり、そうして、物質の性質はこの電子の動きによって左右されると書かれていた。この辺りが、なぜかぼくの気になった部分だった。
 ここからは、ぼくの文学的な妄想ゲーム。整合性など度外視な連想の数々だ。
「この世のあらゆる現象は電子しだい」と本には書かれていた。
 電子=マイナスとするなら、この世のあらゆる現象はマイナスしだいということにならないだろうか。
 マイナス、ということばは一般的にはネガティブなことを想起させる。生きてゆく上ではあまり好ましくない、なるたけ避けたいものであると言っていい。
 気の持ちようであったり、成功のためにはプラスにかんがえることばかりが強調されているけれども、でも実はその影にあるマイナスこそが重要である、という捉え方はなんだか面白味があり、気が楽になるものでもあった。多分それは、あんまりプラスにばかり偏っていても気疲れを起こした経験が重なっているからかもしれない。
 そう言えば、物事に変化を及ぼすことを「影響」と書く。「実響」ではなく「影響」つまり影=マイナスこそが現象を変化させているということが漢字にも見て取れる。
 このマイナスを単に引き算と捉えるなら、なにを積み重ねてゆくのかと同時になにをどう減らしてゆくのかも大事になってくる。まるで物が溜まりに溜まった身動きの取れない部屋を断捨離してゆくように。深呼吸もまずは吐いてから、と聞いたことがある。人生は案外引き算勝負なのかもしれない。
 そんなかんがえを働かせたら、マイナス=虚数、という変換がふと頭に浮かんできた。
 サイモン・シンというひとが書いた『フェルマーの最終定理』の中で、ぼくは初めて虚数を知った(いや、もしかしたら学校で習っていたかもしれないけれども、そんなもの覚えてなどいない)。虚数とは意図的人為的に作られた数である、と説明されていたのを多分ぼくの勝手な解釈で記憶している。
 確か、どうしても解けないある数学の難問に対して自乗するとマイナスになる虚数を用いると綺麗に解けた、という文章があって、当時のぼくは「なんてこじつけがましい解き方だ」となぜか憤慨していた。自然天然の数の世界に人工物を持ち込むなんて、それが許されるならなんだってありじゃなイカ。と、半分はよく理解できていない自分の言い訳として好印象は抱いてなかった。
 ただ、その人工的な虚数がもしも宇宙的な法則ないしはエネルギーの一部であったとしたら、これは面白いんじゃないかとかんがえてからは逆に魅力的な数になった。人間が微力ながらに観測することのできるダークマターの派生系かもしれない、とおもうとまた一歩宇宙が身近なものに感じられる。宇宙はマイナス性によって変化している。「引力」も引く力のことだ。宇宙も計算する。
 確かに虚数はひとの意識が作り出した。でもそれは宇宙エネルギーの、少なくとも一端を人間が発見したことでもあり、さらには人間の意識、精神というのは本来が宇宙エネルギーそのものなのじゃないか。人間の精神=虚数が現象=数式を動かすと言うなら、それこそまさに「思考は実現化する」ことにつながってくる。
 以下はぼくのざっくりメモだ。
 
 意識=宇宙エネルギー
 僕らの個性は分子レベルから始まる 原始レベルに個性はない
 個性とは配列 既存の有と有との複合体 個性(私)とは複素数 個性には虚数を交える
 自然=プラス 人工=マイナス
 マイナスこそがエネルギー
 自然数=平面 実数=立体 有理数無理数=4次元 以上は物質的な数学 
 虚数=5次元 エネルギーとしての数学 
 引き算(減少)によって現象を動かし、引き算によって願望を引き寄せる
 宇宙は影でできている 何者かの影 
 虚数アポトーシス 何かを生成するための必要な引き算
 
 こんな感じで、ぼくは書籍そっちのけで好き勝手ことばを繋ぎ合わせていた。