STUDIOwawon

STUDIOwawon(スタジオわをん)は、「かる、ゆる、らく」をモットーに、ことばをデザインしてゆくスタジオです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

役に立たない本

本に関する雑誌を見ていたら「ここにはいつか役に立つ本がある」といったようなことが書いてある箇所があった。或る書店の店員さんの一言だった。 役に立つとはなんなのだろう。そうして、役に立たなければそれは本ではないのだろうか。 つい、そんな意地悪…

役に立ついのち

多くのいのちたちは、だれかのために、なにかのために、役に立っているのだろうか。役に立つ、というからには、反対に役に立たないいのちもあるのだろうか。 役に立ついのち、とことばにしてみると、なんだかおそろしい気がしてくる。 いのちが役に立つもの…

本と喫茶

喫茶店で本を読むひとは多いような気がする。 コーヒーを注文する。それからカバンに手をのばし、本をとりだして、すこし表紙に目を向ける。 本のカバーそのままのひともいれば、おもいおもいのブックカバーをかけているひと、元々のカバーをとって簡素なデ…

 落丁・乱丁

購入した本に印刷ミスがあったため、取り替えてもらったことがあった。 買った本の全ページをなにげなしにパラパラめくっていたら、文字が二重にずれて印刷されている箇所があった。400ページあるうちのたった十数ページ、目をこらせば読めなくもない程度…

猫の寝方

猫という生き物は死んだふりがうまい。 すっかり横になって、アゴを上に向けて寝ている猫を見ると、おもわず死んでいないかどうか確認したくなる。 もちろん生きているのに決まっている。ただ、結構ちかよってみても息をしているのかどうかよくわからない。…

猫のお墓

田舎にいると、ふらっと家にやってきた野良猫にエサをあたえていたらやがて住みついた、といったことがある。 住みつくといっても、元来が野良猫なのでちょくちょくいなくなることもあり、飼い猫というのかなんというのか、そんな不思議なつきあいですごすこ…

娘の一言

ポラロイドSXー70というカメラがある。 やや大きめの弁当箱みたいな四角形で、一見するとカメラには見えない。 これを、上部にポコンと出ているでっぱりをひょいとつまんで引き上げると一瞬にしてファインダーやらレンズやらが顔を出す仕掛けになっている…

満天の星空

「満天の星空」とよく目にする。 これは、ほんとうは「満天の星」とするべきだそうで、理由は、「満天」ということばだけでもう空をあらわしていて、そこに「星空」とつなげるのは空の意味が二重になっておかしいかららしい。「頭痛が痛い」と一緒でまずい書…

花の女神

高階秀爾(たかしな しゅうじ)氏の本『名画を見る眼』には、レンブラントが1657年頃に描いた『フローラ』が紹介されている。 レンブラントを知っているひとは多い。「光と闇の魔術師」「光と影の画家」そういった呼び方にふさわしく、豪華な装飾品とと…

 広辞苑第三版

1983年に出た広辞苑の第三版にはまだ「焙煎(ばいせん)」ということばは載っていない。 第四、五版は知らないものの、これが2008年発行の第六版になるとちゃんと入っている。この25年のあいだに珈琲1杯ができるまでの経過に関心をもち、ただ飲む…

 all is lost

すべてを失って、初めて日本人は星空を発見した。 加藤周一氏の『『日本文学史序説』補講』の或る一部分を勝手に要約すると、そういう風になるのだろうか。『建礼門院右京大夫集』という本の紹介が出てくる。平家が滅びたあと、京都・大原の建礼門院(平清盛…

死者と幽霊のあいだ

幽霊を信じるのか信じないのか、それは大多数のひとにとって人生を尽くしてかんがえるほどのものでもない、他愛のない問いかけとでも言えるにちがいない。信じたところでなにあるのか、信じないことでなにかあるのか、結局は人生に損か得かの話で、得とわか…

生命と死命のあいだ

死者に助力を得ながら、そうして、かれらと協力しながら、いのちについてかんがえてみたいとおもうことがあった。それもできることなら、死者の方を主体として、かれらの方が生きている者よりも多くいのちたり得ているとしてとらえてみたかった。 生命がある…

一期一会

多くのひとにとって本は一期一会の、一度読んだらそれっきりのものではないかとおもったりする。 それが読書家であればあるほど、なおさら一冊の本は数あるなかの一部となってゆく。 本棚に所狭しと本がならんでいる。すると本の内容はまるごと背表紙に集約…

本の表紙

本の表紙に携帯型のインベーダーゲームでもつけたらおもしろくならないだろうか。 読書にあきたら本を閉じて、表紙の厚紙についている薄型のゲーム機のスイッチを入れる。するとテトリスやらインベーダーゲームができる。本につけるなら昔ながらのゲームがい…

お稲荷さんについて

京都は伏見区に伏見稲荷大社というお社がある。全国の稲荷神社の総本宮で、千本鳥居を聞いたことくらいならあるひとは多いとおもう。近年は外国の方もよく訪れていて、信仰の場というよりはすっかり観光名所になっているものの、ともかく連日にぎわいを見せ…