STUDIOwawon

STUDIOwawon(スタジオわをん)は、「かる、ゆる、らく」をモットーに、ことばをデザインしてゆくスタジオです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

おもいつき

自分のかんがえたことはだれかがすでにかんがえついている。 それは聖書であったり、中国の古典であったり、だれかの詩であったり、SNSであったり、ともかくだれかが先に語り、語り尽くしている。 これとおなじようなかんがえもまた、たとえば芥川龍之介の『…

一坪の古本屋

読書が好きであったり、ブックカフェが好きなひとなら、一度は本屋での仕事をおもいえがいたことがあるとおもう。 たとえばここでは一坪の古本屋を想像してみたい。 場所はちょっとした山村で、なんでもないとある古民家。玄関は農家特有の、昔ながらのひろ…

病気をあやす

塩が体に良いことを教えてもらったことがあった。 塩とひとくちにいっても、たとえばマグネシウムが1000ミリグラムも2000ミリグラムも含まれているような、或いは汚染されていない大昔の海によってできた岩塩のような、自然、天然の塩のことだった。…

愛情を書いたひと

立原道造という詩人が、『愛情』という一編の詩をのこしている。 郵便切手を しやれたものに考へだす これが全文になる。詩というよりも俳句と言ってしまった方がいいくらい、短くて、それが故になにか味わいがしみ出してくる。 ことばそのものが読んだひと…

耳が聞こえる

文章というものは、それ自身が目的では なく、単なる手段に過ぎないのだから。 『「文芸林泉」読後』より ――堀辰雄 たとえば両耳をふさいでみると、表向きはそれで耳の聞こえないひとの疑似体験ができるのかもしれない。とはいえ、それはあくまで聞こえづら…

ズレの肯定

──読み手はあるスキーマを呼びだし、そのスキーマと文章が整合的に理解できたとき、「わかった」と感じます。しかし、その瞬間、別のスキーマを呼びだす機会を失ってしまっているのです。わかった瞬間から、わからなくなるという文章理解のジレンマは、この…

文学実験

文学実験などと大袈裟に銘打って、ここでは、他愛ないおもいつきを書いてみることにしたいとおもっている。もちろんおもいつきだから、根拠とか論理とか、そういったものはうっちゃれるだけうっちゃっといて、アテのない想像でもって表現してゆきたい。 絶対…

賢治と辰雄 「ほんとうのさいわい」について

わたしはここで、堀辰雄と宮沢賢治、このふたりの作家が残したものに助力をもらいながら、ふたりを考察している方々の意見も借りつつ幸いについて手短に一考したいとおもっている。 まずは賢治のことから始めたい。 宮沢賢治は「ほんとうのさいわい」を探し…

岸辺に立って

瑞泉寺(ずいせんじ)は京都市中京区にあって、山号を慈舟山(じしゅうざん)と言った。創建は慶長16年(1611)、江戸時代の最初期にあたる。 京阪電車の三条駅で降りて、鴨川をまたぐ三条大橋をわたってしばらく進むと高瀬川が見えてくる。そこをわたらないで…

文集 『朱の葉』 序文

作家・堀辰雄が知人に宛てた手紙のなかに、 「・・・・どんな小さなものにでも自分の何かは残る その自分の何であるかは神様 に任して、残す努力を我々はすればいい・・・・」 こういった内容のものがある。このことばから助力を得て、いまこんな文章を書い…